よゐこの笑いについて


よゐこの笑いは「シュール」と、よく言われる。
ところで、この「シュール」とは何だろうか?
お笑いにおいての「シュール」という解釈は、
「いい意味」と「悪い意味」の2通りあると思う。
このシュールという言葉を説明するのは至難の業だが、よゐこに対して、
この言葉が使われる場合、決して「いい意味」では使われていない気がする。
「意味の分からない笑い」、「理解できない笑い」などと捉えられている気がする。
さらには、「ワケがわからないから、ウケなくても良い笑い」という
ニュアンスにさえ、聞こえてしまう。
「シュール=すべる(すべってもいい)」みたいな扱いをされていないか?
ゆえに よゐこの笑い対してのシュールという言葉は、
「いい意味」では使われていない場合が多いと感じる。


濱口さんも「シュールって何?」と聞かれて、
「ワケわからんことや!」みたいな事を言うのだが、
(この発言自体は、マジではなく多少のボケが入っているが…)
デビュー当時、よゐこがシュールであると言わしめたネタが次のネタである。
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美容院コントにて(美容師:濱口さん、お客:有野さん)
●美容師:「今日はどういったふうにいたしましょう?」
●お客: 「たくわんにして」
 と言って、有野さんはふところから本物の「たくあん」を取り出す。
 そして、美容師の濱口さんは、「え…?」と言いつつ、
 そのたくあんを有野さんの頭に乗せる。
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これがよゐこの言うべきところの「シュール」である。
しかし、私が思うに、これは決してシュールでは無い
なぜなら、これはただ単に、「ビジュアル的なおもしろさ」であるからだ。
頭にたくあんを乗せる事に深い意味は無さそうである。
であるから、よゐこのこのような笑いに対して「シュール」という言葉は
当てはまっていないように思える。
要は、よゐこがネタをする場合、ツッコミ役であるはずの濱口さんが、
見た目にわかりやすいツッコミをしないからである。
有野さんのボケに対して、注意したり怒ったりするのではなく、
戸惑うという返しをするため、今までに無い独特な空気が作り上げられる。
そういった今までに無い空気に対して「シュール」という言葉が
使われているだけである。


業界では「勢いはナイナイ」「センスはよゐこ」と言われているらしい。
確かにそう思う。両コンビのボケである岡村さんと有野さんを比べたとき、
本当にお笑いの実力があるのは完全に有野さんである。
しかし、それ以外のすべては岡村さんが上だ。


「おもしろいお笑いタレント」の上位にはナインティナインが上がり、
「笑えないお笑いタレント」の上位にはよゐこが上がってくる。
ナイナイの笑いは分かりやすいがレベルはそれほど高くない。
しかし、よゐこの笑いは分かりにくいがレベルは高い。
テレビを観ていると一目瞭然なのだが、なかなか分かってもらえない。


よゐこの事を、面白くないのが面白いという人もおられる様だが、
その解釈も何か違うと思う。別に、面白くなく無いのだ。
ただ、そういう風に見えてしまうというだけの事。
もちろん、芸人にとって、それは致命的であるには違いない。
だから、一般的に、よゐこに対する評価は低くなってしまった。


そういった面白くなく見えてしまうよゐこも、
実は、とてもおもしろい事を言ってはいるのだが、やはり笑いが目立ってない
よゐこは2人とも、前へ出て目立つ笑いをするタイプではないが、
しかし、それを面白くないと解釈するのは違う。笑えるが目立ってないというだけ。
だが、お笑い的にはそれで良くても、やっぱりタレントとしては弱い。
だから、世間からのよゐこに対する評価が低いのもとてもよく理解できる。
ゆえに、「よゐこなんて、面白くない!」と言われても、
私は、「そりゃ、そう思うだろうなぁ…。」と、納得すらしてしまえる。
しかし、何かのきっかけでよゐこワールドに気付けば、
どれほど、よゐこがすごいボケをしているかが解ってもらえるとは信じている。



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●2000年08月20日初回更新日
●2005年01月09日追記・修正更新日