千原兄弟 千原せいじについて


千原兄弟において、せいじさんの役割はかなり大きかった(過去形)。
千原兄弟は揃って怖い風貌。しかし、そんな千原兄弟の芸風に
安心感を与えてくれたのは、なんと言ってもせいじさんである。
正直、見た目は、迫力があり、貫禄がある。
そんなせいじさんのどこに安心感があったかというと、そのキャラクターである。
とんでもないバカキャラであるからだ。
天然という事も手伝って、あの風貌とキャラのギャップがすごく良かった。
見た目の風貌と同じように芸風も恐くあれば、ツッコんだ時、客は引いてしまうだけだ。
それはコンビとして大きな損となる(笑いにならないから)。
よって、見た目は恐かったが、とても愛されるキャラで、
芸は激しいながらも、とても愛嬌のなるバカツッコミであった。
それはジュニアさんの芸風とギャップを持たせる為に重要な事であった。


そう、大阪時代は、「バカ」がせいじさんの売りだった。
「バカな兄と神経質な弟。」このカラーがとても良かった。
しかし、現在は「ガサツ」。これが売りになっている。
相手が先輩芸人であれ、アイドルであれ、タメ口でガンガン ツッコむ
ただし、キャラは「バカ」のままである。よって必然的にいじられることが多くなる。
それがせいじさんの持ち味を引き出せる要素にもなっている。
そして、常にいつでもツッコんで行けるかのように、
いつも前のめりの攻撃的な体勢でいるのが(芸としての)輩丸出しで、
本能的ツッコミ芸人であるなぁと思う。
誰かがボケるのを待っているのではなく、自分がイジられることを待っている。)


せいじさんは、1人で先に吉本総合芸能学院NSC8期生に入学。
そして、当時引きこもりだった弟ジュニアさんをNSCに誘う。
当初、ジュニアさんにやる気は全く無かったが、授業で同期生達のネタを見て、
「これやったら、オレの方がおもろいわ」と思い決心をする。
しかし、そんな同期生の中にはレベルの高いコンビも多く競争も激しかった。
各コンビ、(特に)ツッコミにはいろいろ趣向が凝らされていた。
バッファロー吾郎のヒップアタックや回し蹴りのツッコミ。
FUJIWARAのボケツッコミ。
スミス夫人の大きなリアクションの驚きツッコミ(現在のなだぎ武)。
その中で、千原兄ちゃんが見せたツッコミは、
ボケの何倍もの時間をかけて行うバカノリツッコミだった。


『最近の若い奴らは、すぐ言葉を略して短く言う』というネタを例に挙げると、
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せいじ :「シャーペンは(何の略語)?」
ジュニア:「シャンデリアペンダント」
せいじ :「イヤやわー!そんなデッカイもんぶらさげてられるか!
      うふ。今日は浩史さんとデートの日!
      服装は昨日から選んでたこれでいいんだけど、
      ワンポイントに何かアクセサリーでもあれば…、
      あっそうだ!浩史さんに頂いたシャンデリアペンダントをかけて、
      よいしょ…よいしょ…、浩史さん、お待たせ…て、イヤやわーっ!!」
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これが、せいじさんのノリツッコミ。めちゃめちゃ長い
しかし、実際、おもしろかった。
千原兄弟のネタは、せいじさんのツッコミでもしっかりと爆笑を取っていた
(ジュニアさんも、ノリツッコミしているせいじさんの横で、素で笑ってしまう程。)
間単に言うと、フルテンションのバカノリツッコミだったが、
ジュニアさんの(無愛想な)ボケに対するツッコミとしては、
このように安心を与えられる(愛嬌のある)バカツッコミが
一番良かったんだと実感させられた。


ただし、バカキャラは財産ではあるが、笑いを創れるという事とは別の話…。
昔、「光速脳天ベタキング」という番組(番組のコンセプトとしては、
芸人達が、出題されたお題にボケるというクイズ形式の大喜利番組)があり、
千原兄弟も回答者としてレギュラーに加わっていた。
大喜利大好きのジュニアさんは、もちろん大健闘。
しかし、せいじさんは全然ボケられなかった。スベっていたのではなく、
ボケなかった(何も回答しなかった。)回答者席に座っていて、
他の芸人のボケに、ただ笑っているありさまであった。
それから、数ヶ月経った後、解答者から司会へ転向していた。
う〜ん、これはダメだろう…。そのあたりはもっとポリシーを持って欲しかった。
ツッコミとはいえ、「芸人」なのだから。


そう考えたとき、やっぱりせいじさんは根っからのツッコミなんだな、と。
しかし、せいじさんのツッコミは、本来あるべき、
誰かがボケたときにツッコむというタイプのツッコミではない
どちらかというと、そういう場面ではジュニアさんがツッコむことが多い。
(逆に誰かがボケたとき、せいじさんはそれにただ笑っているだけである。)
せいじさんのツッコミが最大限に発揮されるのは、
やっぱり、自分がいじられたときである
。ガサツでキレた怒鳴りツッコミをする。
常にアンテナを張っていて、誰かがボケた時にツッコミを入れるという、
自分発信のツッコミではない。


正直、せいじさんには芸と呼べるものがない
ゆえに、ガサツで口の悪い乱暴な印象しか残らない
(笑いの技術があれば、それが毒舌キャラなどと呼ばれるのだが…)
いつも、いじられバカにされ、怒っているだけのイメージしか残らない
これがせいじさんの大きな弱点だ。
ジュニアさんはピンの仕事がどんどん増えてくのに対し、
せいじさんにはピンの仕事がはほとんどない。
1人で笑いを作れないからだ。せいじさんをいじってくれる人ありきだからだ。
だからと言って、ピンでバラエティーの司会をするほど力量や人気も無い。
芸人同士でからむときは、そのガサツなままで問題ないと思うが、
芸人以外のタレントさんとからむような場所で
どう振舞うかが大きな課題だろう。
そこを克服しなければ、業界としてもわざわざピンでオファーする意味もない。


あの顔面。あの顔面にあのスタイルの良さ。あの頬骨。
そして、マリリンモンローと同じ場所のホクロ。
ハゲている頭部。ジュニアさん曰く、「世界で一番前髪が短い!」
ツッコミ芸もさることながら、外見にこれだけの武器を持つ芸人さんも珍しいのでは?


デビュー当時、せいじさんはバッファロー吾郎の竹若さんと住んでいた。
有名なエピソード。洗濯機が水漏れして、せいじさんが洗濯機を
持ち上げたようとした時に感電したというエピソードがある。
竹若さん曰く、「感電して、ホネホネになってましたからね。



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●2003年10月03日初回更新日
●2008年03月02日追記・修正更新日