フットボールアワーのネタについて


フットボールアワーの最大の武器であるのが漫才である。ネタは2人で考えているらしい。
フットボールアワーの漫才は、結成当時からめちゃめちゃおもしろかった。
だから私の中では、(第1回開催の)M-1グランプリ2001では優勝すると思っていた。
しかし、実際蓋を開けてみると、フットボールアワーへの評価は高くはなかった。
その評価を受けてフットボールアワーもネタに改善を加えるなどしたらしいが、
私はあの時点ですでに彼らの漫才は完成していたと思う。
なぜ、今と比較してあれ程の評価しかされなかったのだろう?


ただ、当時それほど点数が高くなかったのは、
フットボールアワーの漫才は構成が良くなかった、これに尽きると思う。
M-1グランプリ2001では、ボケを羅列しているだけで話題展開も多く
その流れ・運びに無理があり、さらにオチも無かった
センスや発想はこの時からすごいものを持っていたが、
あのM-1の大御所審査員達には構成の弱さが目についたのかもしれない。
しかし、ベスト3に入ったM-1グランプリ2002、M-1グランプリ2003では、
ネタの構成がしっかりと纏まっており、ネタの話題も1本に絞った。


そして、今になって、「フットボールアワーの漫才は上達した」と言われるが、
ネタの発想やセンスなどはほとんど変わっていないと感じる。
その上達とは、やはり後藤さんのツッコミ、これを差しているかな?と思う。
初期の後藤さんのツッコミは、どうもセリフでツッコんでいる様があった。
ただ現在では、岩尾さんのボケをしっかりと初見の感じでツッコめているのだ。
あと、漫才中での後藤さんの表情・視線にも注目して欲しい。
岩尾さんがボケるまでやネタ振りの最中は客席に視線を向けている。
だが、岩尾さんがボケると、その視線は岩尾さんに向けられる。
これが、「今ツッコんでいます」という事を暗に客にアピールしているのだ。
だから、フットボールアワーの漫才にはメリハリがしっかりしており、
グダグダになることはなく、バシッとツッコミが決まるのだ。
「今ツッコんでいます」というアピールは言い換えれば、
ここが笑うところですよ!
という事である。
後藤さんのツッコミで、岩尾さんのシュールなボケが観客に伝わりやすくなっている。


フットボールアワーの漫才のつかみと言えば、
「何も言っていないのに、顔を見て笑わない!」
「ブサイク連れてきて、すいませんねぇ。」など、
ブサイクをつかみに入る事が多いのだが、それは決して間違っていない。
もともと、つかみというものはそういったものであり、
「また、ブサイクネタかよ〜」という解釈は間違っている。
フットボールアワーの漫才のつかみはブサイクをネタにする事が多いが、
彼らの漫才にブサイクネタという漫才は存在しない
結局、つかみとはできるだけ広範囲の観客に対して、
程度はそれなりであっても確実にウケる自己紹介的なボケで成立するものであり、
そうあるべきである。
麒麟の「麒麟です。」、ハリガネロックの「目、離れてましたー」といったつかみも
結局は、そういうことなのである。


ただ、岩尾さんはできるだけつかみでも遊んでいきたい人であると見受けられる。
大阪の漫才コンテストの進行役に乙葉ちゃんが居たときには、
その時の漫才のつかみで、「ブサイク、ブサイク言うな。乙葉ちゃんも見とんねん」と。
当然、台本には無いことで、このような その時その場でしか使えない
つかみで笑いを取るところなどはさすがだなぁと思う。
そう考えると、世間からの声が耳に入ってくるからなのか、
ブサイクをつかみにして笑いを取るのを避けているようでもある。


フットボールアワーのボケの手法はたくさんあるのだが、その1つとして
わかりやすいところで言うと、音の似ている言葉を掛けていくという手法がある。
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●(結婚記者会見)「結婚ニベア」「結婚指輪!!」
●「キャー、オカンよ〜!」「チカンや!」
●(デパートの店員のいらっしゃいませー)「ちっぽけなしあわせー」「ゆーてるか!」
●(ロールプレイングゲームの武器)
  「どうのつるぎ、はがねのつるぎ、むかしのつるべ」
●(店内アナウンスのピンポンパンポン)
  「結婚願望」、「近親相姦」、「ちんぷんかんぷん」
●(結婚式の司会)「ここで新郎新婦、一旦おすそ直しを…」「お色直しや!」
  「新郎新婦 退場!司会者 発情!」
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あと同じパターンなのだが、さらに一歩進んだシュールをかぶせる
ここが岩尾さんらしくて他の漫才師にない部分。
●(ケンカでタンカ切る) 「しばいたろか!」「はぁ?シンガーソングライターぁ!?」
  「ゆーてるか!」「はぁ?中西圭三ぉ!?」
●(昔話)「むかしむかし、おばあさんは外に出かけるときにすごくオシャレをしたとさ。
  おめかし。おめかし。」「めでたし。めでたし。や!」
  「ふぁんでーしょん。ふぁんでーしょん。」


たくさんある手法の中、あともう1つだけ。意味の取り違いボケもよく登場する。
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●(エレベーターガール)
  「4階、401のおじいちゃんが先程お亡くなりになりました。 上へ参ります。」
●(ロールプレイングゲームでレベルが上がる)
  「(高音で)テレレレッテッテッテー 1オクターブ上がった」
●(早口言葉というのは言いにくい事をスラスラ言うこと)
  「お前、本当は父さんの子じゃないんだ。お前、本当は父さんの子じゃないんだ…」
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(あと、いろいろな手法がたくさんあるが、これぐらいにしておきます。
あまり多く書きすぎて、ネタバレや素直に笑えなくなったりすると失礼なので。。)


ボケだけでなく、後藤さんのツッコミにも注目するべき所はたくさんある。
ガツンとツッコんだあとに、冷たく東京弁で放つ一言。
あと、ボケをツッコむだけのツッコミだけでなく、笑いを取るツッコミをする。
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●「土踏まずを手術して土踏めるにしたろか!」「やめろ!踏めんままおいとけ!」
●「卒業証書入れるやつに入れてポッコン、ポッコンしたろか!」
  「やめろ!先生に怒られるからやめろ!」
●(結婚会見)「なんで証明写真やねん!〜こんな自分で切るタイプいらんねん!」
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私的には、こういった後藤さんのツッコミがもっと増えたら良いなぁと思う。


フットボールアワーの漫才のスタイルはとてもオーソドックスである。
特に、凝ったような、珍しい設定ではない。
店員さんとお客さん、警察と通行人、ファンからの手紙、番組の司会者と回答者、
と、いったような いわゆる古くからある定番とも言える設定である。
ただし、そのオーソドックスな設定にシュールなボケをぶつけてくる
設定からできるだけ万人にわかりやすく伝わりやすくなっており、
自分たちのネタに万人を引き付けておいた上でシュールな笑いを披露する。
このスタイルが彼らにとっては最も合うスタイルだと思う。


そして、コンビ結成翌年に、
2000年:第21回ABCお笑い新人グランプリ 最優秀新人賞
獲得し、その後、漫才の賞レースは総ナメした。以下、受賞歴。
2001年:第31回NHK上方漫才コンテスト 優秀賞
2002年:第32回NHK上方漫才コンテスト 最優秀賞
2002年:第31回上方お笑い大賞 最優秀新人賞
2002年:第37回上方漫才大賞 優秀新人賞
2003年:第32回上方お笑い大賞 話題賞
2003年:第1回MBS新世代漫才アワード 優勝
2003年:M-1グランプリ2003 グランプリ
2004年:第39回上方漫才大賞 大賞
2004年:第33回上方お笑い大賞 最優秀技能賞


最後に、これは私の考えだが、
「こういう事を言いたい。こういったボケを言いたい。
1つの振りでたくさんのパターンのボケがある。」という人は漫才をやるべき。
「こういった設定をやりたい。日常にありえない設定で遊びたい。
こんな人がいたらおもしろい。」と思う人はコントをするべきだと思う。
そういう意味でも、フットボールアワーがコントではなく、
漫才にその重きを置くのはとても理に適っていると私は思う。



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●2005年01月26日初回更新日
●----年--月--日追記・修正更新日