千原兄弟のネタについて


革ジャン姿のジュニアさんの無愛想なボケ。
スーツ着用のお兄ちゃんの大げさなバカノリツッコミ。
これが千原兄弟がネタをする時のスタイルであった。


千原兄弟の初期のネタは、常識や言葉の矛盾をついたネタが多かった。
常識とされている事に対して揚げ足を取る感じ。
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●「ごはんですよ」は、ごはんじゃないですよ。
●アイスクリームのフタ落ちててん。ほんで3歩行った所に
 カップとスプーン落ちてんねん。…3歩で食ったん?
●(コントの設定で)逆子で生まれたというせいじさんに、
 「自分、ようしゃべるなぁ〜。口から生まれてきたんちゃうか?」
●明菜ちゃんカット。それは手首の切り方の1つだ。
●「鼻毛は鼻に生える毛。ワキ毛はワキに生える毛。じゃあ、ヒゲは??
 (口の周りを指さして)ヒ?ここ、ヒ?」
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さらに言うと、レベルの高い掛詞や言葉遊びである。
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●手塩にかけて頑張って行こうや!、ノリに乗って行こうや!、
 このおにぎり部をキューっと引っ張って行こうや!(おにぎり部)
●ハートが曇ってもメガネは曇らせるな!オレの特訓は度がキツイぞ!(メガネ部)
●どこまでもドア(バカドラえもん)
●「コロ助そろばん塾」1円なりなり。2円なりなり。(マッハコント)
●親父ゆずりの鼻歌まじり!ふふん。(親父)
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そして、一見なんとも無いセリフに対して一言付け加える事で、
世界観をガラっと変えるパターン。
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●(コント:親父)
息子 :「オレは親父をとっくに超えてるねん。100m、12秒5や。親父は?」
親父 :「15秒5。」
息子 :「ほれみろ、遅いがな…」
親父 :「靴のかかと踏んで。」
息子 :「速いなっ!!」
●(学園コント)
教師 :「屋上まで来いゆーてんのに、遅いなあいつ。何してんねん!あっ来た!」
生徒 :「…」
教師 :「何しててん!遅かったやんけ!」
生徒 :「…」
教師 :「何しててんって聞いてるねん!」
生徒 :「爪、噛んでた。」
教師 :「ウソつけよ…。噛みながらでも来れるやろ…」
生徒 :「ほな、見せたろか?(と言って、靴を脱ぐ)」
教師 :「足の爪かーい!足の爪噛みながら、この屋上まで上がってきたんか!
      足の爪噛んで、片足になって、はい!階段1段目、はい!2段目、
      はい!3段目…、て、それでここまで来たんやったら褒めたるわ!
      はい!よくできましたぁー!」(せいじさんのめっちゃ長いバカノリツッコミ)


しかし、千原兄弟が大阪でカリスマと呼ばれ始めたぐらいから、
ネタの趣向が変わってきた。「ツッコミ」の無いコントを目指し始めたのだ。
ボケとツッコミという基本のスタイルを脱し、シュール路線に走り始めてしまった。
私の中で、それ以降、彼らのネタがおもしろいと感じられなくなった。
なぜなら、それはシュールではなく、ただ単にツッコミの無いコントだったからだ。
中でも、「キャリアウーマンママ」というネタで、
ジュニアさんが始終一人でしゃべり、お兄ちゃんは顔を伏せて黙ったまま。
そして、オチは、顔を上げたお兄ちゃんがブサイクな女性だったというオチ。
決して、それはシュールとは思えない。(しっかりと笑いを稼いでいた
せいじさんのバカノリツッコミも見られなくなってしまった。)


千原兄弟のネタは全てジュニアさんが書いており、24時間、ネタの事しか考えない生活だった。
そんなジュニアさん曰く、「俺は(同期の)FUJIWARAやバッファロー吾郎のように
昔からお笑い好きってワケじゃ無いから、基礎ができてない。
だから遅れを取ってるから、頑張らなあかん」とコメントしていた。


と言っても、昔からネタのクオリティーは高く、
自分たちが素直におもしろいと思えるコントしかやらないというこだわりもあった。
そんなこだわりの中でも、漫才の新人賞などはしっかり取っていた。
第15回ABCお笑い新人グランプリ優秀新人賞
第14回も親父のネタで出場したのだが、あえなく落選。そして翌年、
一人旅行のネタで優秀新人賞を獲得する。そして、
第29回上方漫才大賞新人賞

上方漫才大賞では、お母さんも駆けつけ「いろいろありましたが…」と感動のコメントをした。


コントでの彼らの息はピッタリであった。
しかし、それは、同じ物を食べ、同じ環境で育った兄弟だからというワケでなく、
綿密なネタ合わせ・練習をした結果であり、
ネタに対する、芸人千原兄弟としての姿勢の表れであった。
ある先輩芸人からは、若かりし千原兄弟のコントを見て「稽古のしすぎ」と評されることもあった。


テレビなどの露出は少ないながらも、現在も昔と変わらず、
ネタに対するこだわりだけは忘れていないようだ。
最近では、ジュニアさんの単独コント「囚」を行うなど精力的に活動している。



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●2003年10月03日初回更新日
●----年--月--日追記・修正更新日