バッファロー吾郎 木村明浩について


木村さんのバッファロー吾郎としての役割は「ツッコミ」であるが、芸風は完全な「ボケ」である。
メガネでデブでアニメTシャツ、決して人気の出るキャラではないが、
コントをやっている時や、各バラエティで活躍しているのを見ると、
木村さんはお笑いをするために生まれてきた人なんだぁと思える。
笑いを仕事ではなく楽しんでやっているのが伝わってくる。


木村さんの笑いのイメージとしては、
プロレスや漫画などマニアックなイメージの方が圧倒的に強いと思われるが、
木村さんの笑いの一番の本質は、「一周回った笑い」をするところである。
一般の人々には、ただのダジャレ・オヤジギャグと思われてしまう笑いでもあり、
とても危険性のある笑いである(一般視聴者の多くは本当にダジャレ程度の認識しか持たないようだ)。
木村さんも当然全てを解った上で、あえてそういった部分で笑いを生み出している。
しかし、このような笑いは焦点や標準を合わせるのが困難であるので笑いとしては高度なのである。
全国区の番組などでやると、きっと「面白くない!」と評価されてしまうような笑いだと思う。
世間からのそういった声はもう容易に想像できてしまう。


「めちゃイケ」の「笑わず嫌い王」のコーナーに登場時、乱れた襟を指摘され、
「これは、わざとです。これは、ワザトラマンです。」と発言した。
視聴者の多くは、これを最低コメント(つまらない)と思った人々もたくさんいると思う。
しかし、私にとっては最高コメントであったし爆笑した。
これが、一周回った「あえて」な笑いである。
ナインティナイン(センス的にも役割的にも視聴者寄り)もこの発言に対して、つまらない!という扱いをしたが、
それは違う。
こういった「あえてな笑い」にはそれなりの返し方がある。つまらないと全否定してはダメだ。
(いや、別につまらなくはないのだ。そこがそもそも違う)
こういった笑いをおもしろいと感じるか、面白くないと感じるかでその人の本質的なセンスが垣間見られる。
バッファロー吾郎のファンは笑いのセンスがある人々が多く、
こういった笑いで笑えるというのは、やはりセンスのある証拠だと思う。
ただ、世間にはそうでない人々の方が圧倒的に多いのも当然で、
その絶対数がそのままバッファロー吾郎の活躍に比例しているようである
間違って欲しくないのは、木村さんの笑いがベタなのではなく、
「ベタを笑いにしている」という事なのだ。
面白くなさすぎると人間笑える事がある。木村さんはその空気をあえて意図的に作り出しているのである。
意図的に深夜的笑いを作り出しているのだ。だから高度な笑いなのである。


レスラーにケツを思いっきり蹴られなどし、リアクションを取る時に
カメラのフレームから姿を消し、メガネを明らかに自分でズラしてからカメラ前に戻り、
「ありゃ〜」とリアクションする。
ただ、これを見て、「メガネ、自分でズラしてるじゃない!わざとらしい!」と
本気で思う人がいるらしいから大変なことである。不思議で仕方ない。
そのあたりの笑いを木村さんは好んでするし、一番おもしろいパターンでもある。
これを理解出来ない人は木村さんの笑い全般を理解出来ないだろう。


結局このように、木村さんの笑いのパターンが(厄介なことに、)
「おもしろいのにつまらなく見えてしまう」のだ。
私も視聴者のセンスがあれやこれやと書いてきたが、
一般視聴者はこのような「あえてな笑い」で笑えないのが普通だと思う。別にそれで良いと思う。
ただ、それが木村さんの責任として攻撃になるのが厄介なのである。


また木村さんはどうでもいいような雑学の知識が豊富である。
特に、様々な芸能人の知る人ぞ知るといったエピソードの知識はすごい
(あ、これは竹若さんにも言えることかもしれないですね。)。
これは木村さんが必死に勉強して覚えたということではなく、
元々、そういった部分に着目してしまう才能があるのだろう。
それをそのままネタとしてしゃべることもあるし、
モノマネのレパートリーとして知る人ぞ知る、まさにマニアックな一部分をネタにもする。
あとはもちろん、漫画やプロレスの細かい知識もものすごい。
ゆえに、ツッコミ芸人としてツッコミのボキャブラリーがハンパじゃない。
ツッコミのフレーズ単体だけで笑えてしまう。


ちなみに、初期のバッファロー吾郎のコントでは、
木村さんのツッコミが、ドロップキックやヒップアタックであったり、
息を切らしながらの暴れツッコミをしていた。
松本人志の著書「遺書」の中で、
「今の若いコメディアンときたら、ジャンプしてつっこんだり、回し蹴りしてつっこんだり(なんじゃそりゃ)、
そんなことじゃいつまでたっても浜田は抜けないよ」と、書かれてあったのだが、
まさしく、あの一文はバッファロー吾郎木村さんの事であろうと私も思ったし、
木村さん自身もラジオで言っていた。
しかし、あのツッコミは初期のバッファロー吾郎を世間に印象付ける良いツッコミになった。
「Wメガネ」「ヒップアタック」がバファロー吾郎の代名詞になっていた。
しかし最近では、ネタの中で木村さんツッコむことはほぼ無くなった。
意図的にツッコミの無いコントをするようになった。
(もちろん役割的にはツッコミのとしての台詞はあるのだが、
いわゆる「なんでやねん!」的なツッコミらしいツッコミをしなくなった)
もちろん、「遺書」に書かれたからというそんな理由は一切関連なく、
自分への挑戦なんだと思う。
従来の「ボケ+ツッコミ」という形式にとらわれずに、
純粋におもしろいことを言って笑わせる。純粋におもしろいことをして笑わせるという木村さんの挑戦でありこだわりなんだと思う。



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●2001年07月08日初回更新日
●2010年3月24日追記・修正更新日